2017/03/03 CO2排出量ゼロの電力に高い価値「FIT電気」 2017年度から新市場

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【新電力ニュース】2017/03/03 CO2排出量ゼロの電力に高い価値「FIT電気」 2017年度から新市場
ようやく日本でも地球温暖化対策を推進する体制づくりが活発に動き出した。政府が2020年度の発送電分離(電力会社の送配電部門の中立化)に向けて整備する新市場の1つに「非化石価値取引市場」がある。化石燃料を使わずにCO2(二酸化炭素)を排出しない方法で作った「非化石電気」が対象で、再生可能エネルギーと原子力が含まれる。

現在の卸電力取引所では「化石電気」と「非化石電気」を区別なく売買している。今後はCO2を排出しない「非化石電気」を新しい市場で売買できるため、発電事業者と小売電気事業者がCO2排出量の削減に取り組みやすくなる。ただし電力そのものは従来の市場で売買する方法に変わりはない。排出量ゼロの価値を「非化石証書」に換えて新市場で取り引きする。

 小売電気事業者は需要家に販売する電力のCO2排出量を算定する時に「非化石証書」を使える。証書に記載された電力量に対してCO2排出量をゼロで計算できる仕組みだ。小売電気事業者は2030年度までに電力1kWh(キロワット時)あたりのCO2排出量を0.37キログラム以下に抑えることが法律(エネルギー供給構造高度化法)で求められている。

 火力発電のCO2排出係数は0.5キログラム/kWh以上になるため、CO2を排出しない再生可能エネルギーか原子力の電力を調達して排出係数を引き下げなくてはならない。市場を通じて「非化石証書」を購入すれば、実際に「非化石電気」を調達しなくてもCO2排出量を削減できる。

 政府の原案では「非化石証書」を2種類に分ける方針だ。1つは再生可能エネルギー由来の電力であることを示した証書、もう1つは発電した電源の種類を指定しない証書である。指定なしの証書の大半は原子力が占める。どちらの電力も化石燃料を使わない発電方法で、CO2を排出しない「ゼロエミッション価値」がある。

 再生可能エネルギー由来の証書を購入した場合だけのメリットもある。小売電気事業者はウェブサイトなどで開示する電源構成のグラフや表に加えて、「実質再エネ100%」といった表現で「非化石電気」の価値を説明できることだ。CO2排出係数の低さと同時に、再生可能エネルギーの価値を多く含む電力を訴求できる。

 「非化石価値取引市場」は2017年度内に開設する予定だ。当初は固定価格買取制度(FIT)の対象になる「FIT電気」だけを取り扱う。そのほかの再生可能エネルギーと原子力による電力の「非化石価値」は2019年度から取引を開始する。

証書では原子力を特定できない

 FIT電気は2017年4月に施行する「改正FIT法」によって、電力会社の送配電部門が発電事業者から買い取る方式に変わる。買い取った電力は原則として卸電力取引所を通じて売買する一方、買取費用は国の機関(費用負担調整機関)を通じて最終的には電気料金から回収する仕組みだ。

 このためFIT電気の「非化石証書」は費用負担調整機関が新市場で売り出す。FIT電気の非化石価値を新市場で売買しながら、実際の電力は従来の取引市場で売買する体制になる。小売電気事業者はFIT電気を調達しやすくなるうえに、証書を購入してCO2排出係数を引き下げることができる。

 小売電気事業者は法律に定められた2030年度のCO2排出量の目標達成に向けて、削減に必要な量の証書を「非化石価値取引市場」で購入する。この取引によって費用負担調整機関が得る収入は、電気料金に上乗せする賦課金の軽減に生かす。FIT電気の拡大に伴って増える一方の賦課金を抑制できる。

 政府は「非化石証書」の入札を1年間に複数回に分けて実施する方針だ。各事業者の発電実績をもとに証書を発行しながら、年度末に1年間の取引の全体量を確定して翌年度の第1四半期(4~6月)に最終回の入札を実施する。この方法によって「非化石証書」の取引量を実際の発電量と一致させる。

 入札方式は「マルチプライスオークション」を採用する。入札価格の高い順に取引が成立していく。「非化石証書」の需要が大きいほど取引価格が高くなって、費用負担調整機関や発電事業者の収入が増える仕組みだ。再生可能エネルギーを促進しながら国民の負担を抑制できる。

 問題は原子力による「非化石価値」の取り扱いである。証書には原子力であることを表示しないため、購入する小売電気事業者には電源の種類が明確にわからない。FIT電気を含めて再生可能エネルギーの電力に対しては、証書の中で再生可能エネルギーを指定するケースが大半を占める見込みだ。「指定なし」の証書は原子力によるものとみなせる。

 とはいえ一般の需要家には、小売電気事業者の電源構成に付随する注釈を見て原子力による「非化石価値」が含まれていることを判断するのはむずかしい。安価に購入できる「指定なし」の証書でCO2排出係数を低減する小売電気事業者は当然ながら出てくる。需要家は原子力の電力を「非化石価値」だけ間接的に購入する形になる。

 需要家が電源の特性をもとに電力を購入できる選択肢を国も推奨している。であるならば、すべての証書で電源を指定すべきである。証書を発行する認証機関は電源の種別を特定できる。原子力の「非化石価値」を需要家にも見えるようにしたうえで、国民が小売電気事業者を選択してCO2排出量の削減に取り組む体制が望ましい。