2017/06/02 米「パリ協定」離脱で何起きる? 3つのシナリオ  日本経済新聞

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新電力ニュース

【新電力ニュース】2017/06/02 米「パリ協定」離脱で何起きる? 3つのシナリオ  日本経済新聞
 米トランプ大統領が、地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」からの離脱を1日午後(日本時間2日早朝)に表明する見通しだ。温暖化ガス排出量で世界2位の米国が離脱すれば、枠組みの基盤が揺らぎかねない。日本の産業界にどのような影響が及ぶのか。3つのシナリオを予想した。

■シナリオ1 影響は軽微

 「温暖化対策はこれから長期にわたって取り組む問題だ。米国が離脱したからといって、自分たちもやらないとは考えにくい」。経団連で環境安全委員長も務める木村康JXTGホールディングス会長はこう述べる。

 世界のほぼ全ての国・地域が温暖化対策の目標を掲げたパリ協定。発効を後押ししたのはグローバル企業だ。アップルやマイクロソフトなど米国企業を中心に、事業活動で温暖化ガス排出をゼロにする動きが広がっている。

 なかでも世界最大の排出国である中国が温暖化対策に積極的だ。低炭素型発電所の電力に補助金をつけて政府主導で推進。環境技術で地方企業を育てるなど「環境ビジネスで経済振興を狙っている」(三菱日立パワーシステムズ幹部)。

 積水ハウスの石田建一常務執行役員は「世界では温暖化対策は商機だとみている」と指摘する。輸出産業を中心に、温暖化対策の手綱を緩めることは商機を逸するとの見方が強い。

■シナリオ2 新興・途上国で停滞も

 発展途上国の温暖化対策を支援する多国間基金「緑の気候基金」(GCF)の行方が注目される。総額100億ドル強の拠出が表明され、米国は30億ドル、日本は15億ドルとしている。

 米国の30億ドルのうち、20億ドルは未拠出だ。協定離脱となれば20億ドルの拠出は絶望的とされる。

 新興国や途上国は、「デカップリング」と呼ばれる経済成長しながらエネルギー消費を抑制する難題に向き合う。先進国は資金援助しながら環境性能の高い設備の導入を促すことがGCFの意図するところだ。

 だが米国の拠出停止で「はしごを外されたと思う途上国が出てこないか心配だ」(三井物産戦略研究所の本郷尚シニア研究フェロー)。

 環境技術に強みを持つ日本企業は逆風だ。新興・途上国に排ガス回収装置や再生可能エネルギー発電などの輸出が伸び悩む可能性がある。

■シナリオ3 世界全体で協定が形骸化

 最悪のシナリオもあり得る。背景にあるのが保護主義だ。

 中国は温暖化対策に積極的とはいえ、景気が大きく後退すると、米国と同じく既存産業保護のため、環境政策が後退する可能性はあり得る。排出量が世界1位、2位の両国が後ろ向きになれば協定の存在意義は揺らぐ。

 欧州も盤石ではない。英国の欧州連合(EU)離脱により、石炭産業国ポーランドの発言権が高まっているとの指摘もある。

 気候変動に対する逆回転の流れは日本に及ぶ可能性もある。パリ協定やエネルギーミックスを背景に、環境省が新設に厳しい意見を出すなど、逆風吹く石炭火力発電。「石炭火力発電を持つ電力会社は規制緩和を求める動きが高まるかもしれない」(電力会社幹部)との声もささやかれる。

 次世代への遺産となる温暖化の問題にどう向き合うのか。その問いは、我々現役世代にかつてない重さでのしかかっている。

出典:日本経済新聞(榊原健)