2020/05/14 電力+水道データ 生活を可視化

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新電力ニュース

【新電力ニュース】2020/05/14 電力+水道データ 生活を可視化
東京電力ホールディングスが、電力データを活用しビジネスモデルを変えようとしている。首都圏で抱える約2800万の顧客の電気の使い方を分析し、生活実態を浮き彫りにする試みを始めた。水道など異業種とも連携し、在宅率をほぼリアルタイムに把握し、店舗の営業や物流の配送の効率化につなげる。

3月、東電と東京都水道局が協力し、国内でも珍しい取り組みが始まった。電力、水道やガスといったライフラインのデータを活用し、生活に役立つサービスの開発を目指すのが狙いだ。
仕掛けたのは「グリッドデータバンク・ラボ有限責任事業組合」(東京・千代田)。東電傘下で送配電事業を手掛ける東電パワーグリッドとNTTデータが共同出資し、2018年に設立した組織だ。東電から出向している山口哲生マネジャーは「電力などのライフラインデータを使えば、細かく生活の状況を浮き彫りにできる」と説く。


水漏れの通報も

東京都は通信機能を持つ計測器「スマートメーター」を水道に設置する方針で21年度にシステムを構築し、22年度から普及させる。東電はグリッドデータバンクを介して自社の電力データと都の水道データを連携し、分析した生活関連サービスを提供する計画だ。

例えば、電力の消費量が少ないのに水道の使用量が多ければ、家の不在時に水漏れなどのトラブルが起きていると推定し、顧客に通報できる。ガスでも同様の提携先を探っている。
携帯会社の通信データは人の移動分析に役立つのに対し、電力などのデータは家の生活状況を把握できるのが特徴だ。東電幹部は「宝の山」と期待する。

データ活用に動きやすくなった背景には、電力のスマートメーターの普及がある。検針員が1軒ごと回っていた集計作業を自動化できる。東電管内では3月末で約2500万台が普及している。国は24年までに全国をカバーし約8千万台を設置する計画だ。

このスマートメーターは30分ごとの電力の消費状況も集められる。グリッドデータバンクが東京都足立区と実施した検証では、家庭の電気の使用量を調べれば、災害時に逃げ遅れた家庭の特定などに役立つことが分かった。山口氏は「避難状況が一目で分かる」と語る。

このデータに注目する企業は増え、設立から1年強でKDDIや三菱地所など約120の企業・団体が検証に加わった。


時短営業に活用

特に有望なのが小売業と物流業だ。東電はグリッドデータバンクを通じ小売り大手とデータを出店に活用するための検証を始めた。店舗が周辺住民の帰宅時間のデータが分かれば、無駄に長く開店する必要がなくなる。足元では新型コロナウイルスの感染予防で時短営業や入店制限をする店舗も多く、潜在需要はある。

一方、物流会社とは在宅率が高い時間帯に効率的に配送するルートの策定で連携できるとみる。データで地域の空き家率もわかり、不動産価値の算定にも役立つという。

国も電力会社の取り組みを後押しする。これまで電力会社は電気事業法で原則、個人の電力の情報の外部提供を禁じられてきた。電力の全面自由化が進むなか、大手電力の送配電部門が自社の小売部門に対し、競合する新電力の営業情報を流すのを防ぐ狙いがあった。

だが経済産業省は、データの適切な利用は新サービスの開発に役立つとみて例外規定を設ける方針を示した。本人の同意を前提に個人が特定された形でのデータ提供も可能とする。今国会で法案が通過すれば、電力会社が異業種と組むデータ活用が本格化する。

東電は4月、小早川智明社長直轄の「DXプロジェクト推進室」を立ち上げた。同じく新設の最高マーケティング責任者に就いた長崎桃子氏が管轄し、関連サービスの開発を急ぐ。協業する企業からデータ提供料を受け取るビジネスモデルなどを検討している。

電力会社はかつて全てのコストを電気料金に上乗せできる「総括原価方式」で安定した経営ができた。東電社内には「マーケティングも分からなかった」(幹部)と自省の声もある。

電力の全面自由化で足元では顧客が離れ、小売事業は減益が続く。危機感を背景に、スピード感をもって新たな事業を生み出せるかが試される。


出典:日本経済新聞