2020/09/04 東電、企業結び再エネ融通 「仮想発電所」分散電源束ねる 異業種の参加後押し

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【新電力ニュース】2020/09/04 東電、企業結び再エネ融通 「仮想発電所」分散電源束ねる 異業種の参加後押し
東京電力ホールディングスは2021年、太陽光発電設備などを持つ企業向けに「仮想発電所(VPP)」への参加を支援する事業を始める。電力の需給調整や売買の手続きなどの業務を東電が代行する。新たな収益源にするほか、広域の電力需給の安定にもつなげる。VPP事業は欧州など海外勢も含めた大手が参入を予定する。関連ビジネスの拡大で、再生可能エネルギーのコスト低減や電気料金の引き下げが進む可能性もある。

需給調整を代行

日本でのVPP事業は、電力需給の過不足分を取引する市場が新設される21年度から本格化する見通し。東電や関西電力、英蘭ロイヤル・ダッチ・シェル子会社の独ゾネンなど複数の企業が参入を検討している。

VPP市場では東電のような全体の運営企業のほか、自社で保有する再生エネや蓄電池などの設備で電力の需給調整を担う企業が必要となる。日本では太陽光などの再生エネ設備を持つ企業が増えている。ただVPPの枠組みに加わるためには需給調整のスキルや電力取引の専門知識が求められ、異業種にとっては参入のハードルが高い。

東電は21年からこうした異業種を中心に、参加支援サービスを始める。企業が持つ設備の実際の運用や、電力の売買などの煩雑な業務を代行する。企業は太陽光パネルや蓄電池を持っているだけでVPPの需給調整に参加し、新たな収益源にできる。東電は代行した業務に応じて手数料を得る。

東電は支援サービスの料金については今後詰める。VPP市場では、KDDI傘下の新電力、エナリス(東京・千代田)も21年から東電と類似の支援事業を開始する予定だ。エナリスは同サービスを年間で数百万円程度で提供する予定で、東電の価格帯も同水準となる可能性がある。

同サービスは東電が運営するVPP事業のほか、同業他社のVPPの枠組みに参加する場合も利用できるようにする。東電は当面の目標として、原子力発電所1基の3割程度に当たる出力数十万キロワット相当のVPPを構築したい考えだ。

電力で国内最大手の東電がVPPの新規参入を促すことで、市場の活性化につながる。VPPは東電の競合である新電力にとっても新たな収益源となるが、VPPが次世代の電力インフラとなる可能性が高い中、東電は幅広い層に自社サービスを提供して市場の主導権を握ることを目指す。

東電は自社の電源として風力発電など再生エネの拡大を目指しており、地域の電力需給を柔軟に調整できる体制の構築が急務だ。電力は需給のバランスが崩れると大規模停電につながり、供給過多の際に再生エネ設備の停止を迫られるためだ。VPP事業が拡大すれば広域的な電力需給の安定にもつながるとみる。

VPPの事業化で先行しているのは欧州だ。イタリアの電力大手、エネルグループはすでに欧米など約10カ国でVPPを展開。独ゾネンも世界で6万件超の顧客を持つ。

政府目標に弾み

日本でも今後の市場拡大が見込まれる。矢野経済研究所(東京・中野)によると、国内のVPPなど電力需給の調整ビジネスの市場規模は、19年度の44億円から30年度には730億円まで拡大する見通しだ。

政府は30年度に全電源に占める再生エネの比率を、現在の17%から22~24%に引き上げる目標を掲げる。ただ再生エネの導入を支えてきた固定価格買い取り制度(FIT)は見直しが進み、買い取り価格が下落。企業にとっては新規に再生エネを導入しても、収益をあげにくくなっている。

VPPの市場が拡大すれば、再生エネの需給調整で企業は協力金を得られるようになる。FITに頼らなくても再生エネを導入しやすくなり、政府の再生エネ目標の達成へ弾みがつく。

国際大学の橘川武郎教授は「VPPが広がれば各地に分散する再生エネを効率的に利用できるようになる」と語る。中長期的には再生エネの運用コストが下がり、電気代の引き下げにもつながることが期待される。

▼仮想発電所(バーチャル・パワー・プラント=VPP) 一定の地域の中で分散する小規模な再生可能エネルギー発電や蓄電池などを制御し、あたかも1つの発電所のように機能させる仕組み。電力会社の依頼を受けた企業が各地の電力設備を遠隔制御し、参加者は需給調整に貢献することで協力金が得られる。
 大手電力会社は主に火力発電の調整で需給を均衡させてきたが、VPPでは電力が余りそうになると蓄電池に充電し、不足しそうになると蓄電池の電力の供給を指示して需給を管理する。

出典:日本経済新聞